KZ E10 使用レビュー!4ba+1dd完全ワイヤレスイヤホンの音質や装着感は?
中国のオーディオメーカーKZ(ケーゼット)から、メーカー市場初の完全ワイヤレスイヤホンが発売された。片側5ドライバ、合計10個ものスピーカーを搭載したハイエンド構成だ。この構成で価格は約6,500円から。果たして音質や装着感、製品の仕上げはどうなのだろう?
非常にコスパの高い製品をリリースし続けているKZ社の、新たな挑戦とも言えるKZ10を購入し、2週間使用してみた。実際に触って、音質や質感、装着感、スマートフォンとの接続などを調査していく。
KZ社の新たな挑戦が覗える本気製品
2019年10月。中国のオーディオメーカーKZ(ケーゼット)から、メーカー市場初の完全ワイヤレスイヤホンが発売された。厳密には、以前「T1」という完全ワイヤレスイヤホンを発表したことがあるが、それはあくまでもプロトタイプだそうだ。
そして、今回発売されたE10(イーテン)だが、驚くべきは4ba+1dd、片側5ドライバという構成だ。同社のZS10ProやAS10と同じドライバ構成で、価格は約6,500円から(中国のサイトから個人輸入した場合)
スペックだけ見ると非常にコストパフォーマンスの高いイヤホンに見える。ここからは、実際に製品を開封し、レビューしていく。
パッケージ
パッケージを開封すると、透明のプラ板で仕切られた仕切りが出現。本体(ケース)と、右側にはケーブル類がまとめられた箱だろうか
付属品
付属品は以下のとおりだ。
・本体(ケース)
・説明書
・KZの保証書
・USB-A to USB-Cケーブル
・替えのイヤーピース×2セット
・箱
非常にシンプルな付属品。替えのイヤーピースはLとS、本体にMサイズが付属するので、3種類のサイズがら選べるということだ。
外観と装着感
KZ E10の外観は写真の通り。他の完全独立型ブルートゥースイヤホンと比べると、格好いい仕上げと評価できるのではないだろうか。高級感もある。
装着感は、個人的にはあまり満足していない。まず筐体が大きいことが1点。それと、耳に合わせたような出っ張りがあるのだが、私の耳には合わなかった。とはいっても一般的なイヤホンと比べるなら許容範囲内かもしれない。
普段Shureのイヤホンを使用しているため、それと比較した時の装着感には天と地の差があると感じてしまった次第だ。
KZ E10の音質
非常にクリアで、中音が綺麗に鳴る印象。
2週間ほど様々なジャンルの曲を聞いてみての大まかな感想だ。基本的にフラットではあるが、中音から高音にかけてがやや強調された、バランスの良いチューニングになっていると感じた。
iPhoneとの接続時
iPhoneに接続し、AmazonプライムMusic及びiTunesのAACで再生してみたところ、非常にフラットな音質。フラットなあまり、リスニングの楽しさは少ないかもしれない。
無音時のホワイトノイズが多少気になるところ。これはブルートゥース接続なら多少仕方のないところではあるので許容範囲内であろう。
ONKYO DP-X1との接続時
KZ E10はaptXに対応しており、通常のブルートゥース接続よりも情報量の多い音質で聞くことが可能だ。DP-X1など、対応する機器と繋ぐと最大限のパフォーマンスを発揮することができる。
さて、DP-X1でFLAC音源を再生してみたところ、iPhoneでの再生時に比べて解像度が僅かに向上し、より高温域が綺麗に鳴るようになった。これなら、普段のリスニングも楽しい。
室内でのリスニング用に使用しているShure SE846と比較してしまうと、高音の再生能力では明らかに劣ってしまうものの、中音域での解像度の高さはSE846のそれに迫っている。
低音については、イコライザ無しの場合はそこまで強調されず、中音以上の音をわずかに支える程度に鳴ってくれる。非常にバランスの良い低音だ。
高音
イコライザで高音のスライダーを上げてみたところ、一定以上強調させると音の粒感が消えてしまうことがわかった。高音シャリシャリで聞きたい方にはあまり魅力的ではない。これは、使用し続けてエイジングが進むと多少緩和されるかもしれない。
低音
イコライザで低音のスライダーを上げてみたところ、比較的余裕のある低音を鳴らすことができている。低音のポテンシャルはSE846以上に感じる。
これは、おそらく左右に各1機ずつ搭載されているダイナミックドライバが良い働きをしているのだろう。
気になった点
DP-X1で再生中、まれに音切れが起こる。一人の部屋で聞いているにも関わらずだ。頻度は2曲に一回くらい。本体の設定の問題もあるので一概には言えないが、機器によっては音切れが起こる可能性を覚悟しておいたほうがいいだろう。
タッチセンサーで操作が可能
KZ E10には本体左右にタッチセンサーが搭載されている。タップすることで、再生/停止、曲送り/戻し、通話の応答/拒否、Siriやグーグルアシスタントなどの起動が可能だ。
ただ、イヤホンを耳に付け外しするの際の、センサーの誤作動が気になった。耳に押し込む際にどうしても触ってしまうことがあるので、できれば感圧式センサーの方が望ましいと思っている。
機器との接続・取り回し
ブルートゥースイヤホンで気になるのが、プレーヤーとの接続や取り回しだろう。iPhoneやMAC(パソコン) との接続の行き来や、設定の仕方についてお伝えする。
接続は簡単
KZ E10と再生機器との接続は、子供でもできるだろう。ケースを開き、ケース上面にあるボタンを3秒以上長押しする。するとケース上面の緑色のLEDが2回点滅する。その後は、それぞれのプレーヤーのブルートゥース設定から「KZ E10」を選択してペアリング。
2回目以降は自動ペアリング
イヤホンをケースにしまうと充電され、接続は一旦解除される。再びケースを開くと、一番最後に接続した機器が通信範囲内にあれば自動でペアリングしてくれる。そのスピードはわずか1-2秒ほどで、かなり速く感じた。
スマホ、PC間の切り替え方法
既に別のデバイスに接続中に他の機器から接続場合は、接続中の端末から「接続解除」してから再接続が必要だ。
Appleの端末間においては「AirPods」のワンタップ切り替えが非常に素晴らしいので、見劣りするポイント。他の多くのブルートゥースイヤホンにも同じことが言えるが。
イヤーピース(イヤーチップ)について
付属のイヤーピースの経は太いタイプで、他の一般的なものよりも高さが浅く作られている。試しにSONYのイヤーチップを付けてみたところ、わずかにゆるかった。
コンプライのイヤーチップを付けて遮音性が上がるか...?と思ったが、高さ(長さ?)の関係で耳への収まりが悪くなったので標準に戻して使っている。ここは個人差がありそうなところだ。
バッテリー持ちは短い
完全ワイヤレスで気になるもう一つのポイントがバッテリー持ちだ。
KZ E10のバッテリーについては、販売サイトでは詳しく言及されていなかった。テストしてみたところ、連続再生時間は2時間半から3時間程度だった。
これは、最新の完全ワイヤレスイヤホンとしては比較的短い部類だ。小さい筐体に5つのバッテリーや基盤を詰め込んでしまったことの弊害といえるだろう。少なくとも、チャージングケースとの併用は必須だ。
防水・防塵機能については言及されていない
KZは、E10の防塵・防水性能について言及していない。公式のお墨付きを得るに至らなかったということは、そういうことだろう。ランニング中など、汗をかくシーンでの使用を考えていた人にとっては心配なポイントだ。
風呂場でテストしてみたところ、多少の水をかけた程度では平気だった。怖くて水中に漬けるには至っていないが、これはほぼ自殺行為になるだろう。
まとめ
KZが繰り出した4ba+1ddの完全ワイヤレスイヤホン、KZ E10は、わずか6,500円の価格に収まりきらない音質と機能を詰め込んだ夢の機械。イヤホン・ガジェット好きにはわくわくが止まらない製品だ。
音質はこの価格帯にしてはすばらしく、取り回しも比較的ストレスフリー。日常使いには耐えるだろう。
しかし、防水性能について全く言及しないというKZの方策と、そのスマートな見た目にために削られた3時間未満のバッテリー持ちに若干の不満がある。使用用途が若干狭まってしまうことは否めない。
また、機器によっては音切れが気になったり、微妙なホワイトノイズがあったり、とまだまだ進化の余地は大きい。
今回のE10は、KZの完全ワイヤレスイヤホン業界へのメジャーデビュー作品と言っていい。研究熱心な同社は、必ず新たな完全ワイヤレスイヤホンをリリースしてくるだろう。KZ社の今後の動向にも注目したい。